債権回収の用語集

債権回収の用語集

ア行

売掛金

商品やサービスを提供した後、代金を同時に受け取らず、後で請求する場合があります。この時に後で代金を請求する権利(債権)を売掛金といいます。いわゆるツケに類似しています。反対に、後に支払う義務を買掛金といいます。
この売掛金をいかに回収するかが、企業の資金繰りでは非常に大事になります。

ADR(裁判外紛争解決手続)

ADRは、alternative disputes resolutionの略で、代替的紛争解決方法とも訳されます。あっせん、調停、仲裁など、多種多様なメニューがあります。

カ行

買掛金

商品やサービスの提供を受けましたが、代金は後払いにしてもらうことがあります。この、後で代金を支払う義務(債務)を買掛金といいます。反対に、後で代金を請求することができる権利(債権)を売掛金といいます。

貸倒れ

貸倒れとは、相手方が倒産するなどして、債権の回収が不能になることです。本来得ることができた現金を失うことになるので、相当な損失となります。これを防ぎ、確実に現金を回収することが、債権回収の役目です。

仮差押え

訴訟を提起すると、相手が警戒して財産を隠匿したり他人に譲渡するケースがあります。これを防止するために、訴訟の提起前に相手の財産を差し押さえることを、仮差押えといいます。仮差押えにより、訴訟判決の実行性を確保することができます。

仮執行

仮執行とは、判決が確定する前に、勝訴判決に基づいて暫定的に強制執行することです。
勝訴しても、上訴がされて判決が確定しない間は、原則として強制執行ができません。ただ、裁判所が「仮執行の宣言」(民事訴訟法259条)をしていると強制執行をすることができます。仮執行の制度により、早期に債権の回収を実現することができます。
なお、仮執行の宣言をするかどうかは、裁判所の裁量にかかりますが、金銭債権のケースでは、多くの場合仮執行の宣言がなされます。

期限の利益

期限の利益とは、一定期間義務を履行しなくてよいという利益のことです。代金の支払義務が遅ければ遅いほど、その間資金を運用できたり、返済金の調達に余裕ができたりするなどのメリットがあります。これを期限の利益といいます。
売掛金や貸付金などは、相手方を信用して、この期限の利益を与える取引ということができます。

期限の利益喪失条項

期限の利益喪失条項とは、契約違反をした場合は相手方の有する期限の利益を失うとする契約の条項です。
例えば、分割払いにした場合に、相手方の支払いが滞ったとします。このとき、支払期限が到来した分は請求できますが、相手方には期限の利益があるので、支払期が未到来の残額分は原則として請求することができません。このままだと、相手方は支払いが滞っていることから経済的状況が悪化していることは明らかなのに、当初の約束通りの支払期が来るまで請求を待たなくてはならないことになります。
このとき、「一度でも支払いを怠れば、請求により期限の利益を失う」といった条項を契約書に入れておけば、支払期が未到来の部分も含めて全額を請求することができます。
期限の利益喪失条項を設けることによって、支払能力が低下している相手に対して、迅速な回収措置を執ることが可能になります。

強制執行

強制執行とは、相手方の財産を差し押さえることによって、強制的に債権を回収することです
勝訴判決や担保権を有していても、相手方が任意に支払わない場合があります。このときに、相手方の財産を差し押さえることによって、強制的に債権を回収するという手段のことを、強制執行といいます。

金銭消費貸借契約

金銭消費貸借契約とは、「お金を貸します」「お金を借ります」という契約のことです。貸金契約と同じ意味の、法律用語です。
この契約により貸した人は、借りた人に対して、貸金を返還してもらう権利を取得します。ただ、利息を請求するためには、契約書に利息に関する条項を入れておかなければならないので、注意が必要です。

黒字倒産

黒字倒産とは、帳簿や決算書では利益が出ている(黒字状態)のに、倒産することです。その原因は、債権回収が不十分のため、入ってくる現金よりも、出ていく現金の方が多くなってしまったことにあります。
こうした事態を防ぐには、慎重な資金繰り計画と、迅速で確実な債権回収が必要になります。

契約

契約書とは、お互いの取引の合意をまとめた書面です。
契約は、原則として合意があれば成立します。しかし、契約は口約束ですと、時間の経過とともにお互いの理解がずれてしまう可能性があります。また、契約は目に見えませんから、裁判官などの第三者には伝わらない可能性があります。
このような合意を目に見える形にしたものが契約書です。契約書は、お互いが何をすればよいのかというルールを明確にし、また裁判官に契約の存在を証明することができるというメリットがあります。「契約書があるのだから支払わないとまずい」と考え、任意に支払ってもらえる可能性が事実上高まるという効果もあります。
このように契約書は様々な役割があり、債権回収において最も重要な文書と言えるでしょう。

公正証書

公正証書とは、公証人が作成する公文書です。公証人という公務員が作成するので、通常の契約書より証拠としての価値が高まります。
特に債権回収の点で重要なのは、公正証書を作ると、民事訴訟を経由せずに、いきなり強制執行をすることができる点です(これを、公正証書の中でも執行証書と呼びます。民事執行法22条5号)。)。
通常の場合、相手が代金を支払わないと、①民事訴訟を提起して、②勝訴判決を得て、③強制執行をするという流れになります。公正証書(執行証書)を作成すると、これが②の債務名義の代わりになり、いきなり③の強制執行を開始することができるので、債権回収のスピードを上げることができます。

サ行

債権(者)

債権とは、(お金を貸した相手方など)特定の誰かに、(金銭の支払いなど)一定の行為を要求することができる権利のことです。
債権の種類は数多くありますが、債権回収にいう債権とは、要するに「お金を払ってもらう権利」といえます。
具体的には、売掛金・貸付金・損害賠償請求権・慰謝料・養育費・残業代などです。
このような債権を持っている人を、「債権者」といいます。反対に、債権を行使される側を「債務者」といいます。
債権回収については、「債権」「債権者」「債務」「債務者」といった用語を使わないと説明が難しいという面がありますので、慣れてしまうことをお勧めします。

債権回収

債権回収とは、本来あなたの手元にあるべきなのに、他人が持っている現金を、きちんとあなたの手元に回収することをいいます。
いくらお金を支払ってもらえる権利を持っていても、現実に回収しなければ絵に描いた餅でしかありません。生活の安定、経営の改善という観点から、債権回収は非常に重要なものといえます。

債権執行

債権執行とは、債権を回収するために、相手の持っている債権を強制的に差し押さえることです。例えば、貸金という債権を回収するために、相手が勤務先に持っている給料という債権を差し押さえる場合などです。

債務(者)

債務とは、(お金を借りた相手など)特定の人に対して、(お金を返すなど)一定の行為をする義務のことです。債権の反対語です。
債務の種類は数多くありますが、債権回収でいう債務とは、要するにお金を支払う義務のことです。
債務を負っている人のことを、「債務者」といいます。反対に、債務者に対して権利を有している人を、「債権者」といいます。
債権回収の問題では、「債権」「債権者」「債務」「債務者」といった用語を使わないと説明が難しい場合もございますので、慣れてしまうことをお勧めします。

債務名義

債務名義とは、権利の存在が公に証明された文書です。相手の財産に対して強制執行をするときに必要となります(民事執行法22条)。強制執行は、相手の財産を国が差し押さえることになるので、国に対してあなたの権利が本当に存在することを証明する文書が必要になり、債務名義がその文書にあたります。
このように債務名義は重要な文書ですから、単なる契約書では足りず、勝訴判決、和解調書、公正証書など、公的機関が関与した文書に限られます。

裁判上の和解

裁判上の和解とは、裁判手続の中で和解をすることです。一度訴えたら白黒がつくまで争う必要があるというわけではなく、いつでも交渉によって、和解で終わらすことができます。
裁判上の和解と、通常の和解との大きな違いは、その和解を定めた文書(和解調書といいます)に基づいて、強制執行をすることができる点です。通常の交渉から和解になった場合は、公正証書にしない限り、相手方の任意の支払いを期待するしかありません。
他方で、裁判上の和解は、裁判官が関与して作成されるものであって、公的な価値があります。そのため、勝訴判決と同様に、この和解調書に基づいて強制執行をすることができます(民事執行法22条7号、民事訴訟法267条)。
このように、裁判上の和解は大きなメリットがあるので、裁判が判決ではなく和解で終了することも多くございます。

先取特権

先取特権とは、一般の債権よりも優先されて特別に保護されるべき債権に与えられた担保権です。
例えば、給料債権は生活の糧になるとても重要な権利です。そのため給料債権は他の債権よりも優遇されています(民法308条)。具体的には、特別な担保契約をしていなくても、一般の債権よりも優先して相手方から金銭を回収することができます。
実務上重要な先取特権としては、給料債権のほかに、動産を売却した売主が取得する動産売買先取特権があります(民法311条5号)。

サービス残業(未払残業)

サービス残業とは、残業代を支払われずに残業を行うことですが、法律用語ではありません。労働基準法上使用者は残業代を支払わなければならず(労働基準法37条)、「労働者が無償で勝手に残っただけだ」という主張はまず認められません。
労働者は、残業時間分だけ、通常の労働時間における賃金を割増した賃金を請求することができます(労働基準法37条)。使用者の残業代未払いが悪質と判断された場合、割増賃金と同額の金額の付加金の支払いを命ずることがあります(同法114条)。
ただ、給料債権や残業代の時効は2年と短いので注意が必要です(同法115条)

敷金

敷金とは、賃貸借契約から生じる債務を担保するために、賃借人から賃貸人に対して交付される金銭のことをいいます。保証金ということもあります。
敷金は、原則として契約終了時に返還されますが、賃料を支払わないなど債務の不履行があった場合には、その敷金から控除されることになります。
これと似て非なるものに「礼金」がありますが、これは、いわば賃貸契約をさせてもらう「お礼としての金銭」という性質であって、返還されるものではありません。

時効(消滅時効・取得時効)

時効とは、一定の期間が経過することによって、権利が消滅したり、反対に権利を取得する制度のことです。権利が消滅する場合を、消滅時効といいます。反対に、権利を取得する場合を、取得時効といいます。
債権を持っていても、実際に行使しなければ、時効で消滅してしまうことになりますので、細心の注意が必要です。

質権

質権とは、ある財産を預かり、相手方が代金を支払わなければ、その財産から優先して債権を回収することのできる担保権です。
お金を融資する代わりに宝飾品を預り、支払えなかったらその宝飾品から債権を回収するといったケースが典型例です。

執行証書

執行証書とは、債務者が訴訟を経由せずとも、直ちに強制執行を受け入れることを承認した条項のある公正証書のことです(民事執行法22条5号)。
通常の場合、相手が代金を支払わないと、①民事訴訟を提起して、②勝訴判決を得て、③強制執行をするという流れになります。執行証書を作成すると、これが②の代わりになり、いきなり③の強制執行を開始することができるので、債権回収のスピードを上げることができます。

受領書

受領書とは、こちらが交付した金銭や物を、相手方が確かに受け取ったという意思を表明している文書です。この文書があることにより、「お金など受け取っていない」「商品はまだ受け取っていない」といった相手の主張を封じることができます。

少額訴訟

少額訴訟とは、請求金額が60万円以下の場合に行うことができる、民事訴訟の特別な手続です(民事訴訟法368条)。一回の審理で終了させることを原則とする(同法370条)など、簡易迅速を重視した手続です。

譲渡担保権

譲渡担保権とは、相手方の財産の所有権をこちらに移転しつつ、その財産の使用は相手方に許したままにする点に特徴を持つ担保権です。相手方が事業に必要な財産(機械・棚卸商品)などを使用させて収益力を維持させたまま、いざとなったらその財産を優先的に取得することができます。
実務のニーズによって生まれた担保権のために、かなり使い勝手がよいですが、法律による明確なルールがないため、裁判例などをよく理解しておくことが重要です。

署名

署名とは、手書きで氏名などのサインを文書にすることです。これにより、確かに相手方がこの書類に同意したことを証明することができます。
スタンプなどで氏名等を印字する場合は、「記名」と呼ばれますが、これでは「私が押したのではない」と紛争になるリスク
があります。これに対して署名ならば、筆跡鑑定で誰が書いたかを証明することができます。
なお、署名をする際には、同姓同名の別人であるという誤解を防ぐために、住所も一緒に記載することが一般です。さらに、署名に加えて押印(実印が望ましいです)をもらうと証拠価値が高まります。

所有権留保

所有権留保とは、商品は引渡しても、代金が完済されるまでは所有権を移転させないという担保権のことです。これにより、相手の未払があった場合には、所有権者として速やかにその商品を引き戻すことができます。
実務のニーズによって生まれた担保権のために、使い勝手はよいですが、法律による明確なルールがないため、裁判例などをよく理解しておくことが重要です。

請求書

請求書とは、相手方に対して支払を請求する意思を表明した文書です。証拠として価値があるだけではなく、経理上も重要な文書です。

相殺

相殺とは、こちら側が相手に対して有している金銭債権と、逆に相手方に対して負っている金銭債務を同時に消滅させる意思表示のことです(民法505条)。相殺をすると、意思表示だけで迅速に、加えて他の債権者に対して優先的に債権を回収するのと同様の効果が得られます(相殺の担保的機能)。双方向的に債権債務を負っている場合には、非常に有効な債権回収手段です。

租税債権

租税債権とは、国や地方公共団体が納税義務者(債務者)に対して有する、納税を請求する権利です。
租税債権は税金という非常に公的な性質を有するため、原則として他の債権者に優先して回収できる(国税徴収法8条・地方税法14条)など、非常に優遇されています。相手方の税金の滞納状況には注意が必要です。

タ行

担保(権)

担保とは、債権の回収を確実にするための手段です。
金銭債権を持っていても、相手方に現金が全くなければ、回収は非常に困難になります。しかし例えば、支払えなかったら相手方の持つ土地を競売し、その代金から回収するなどの合意をするとします。そうすると、土地の価値だけ回収の見込みが飛躍的に高まります。これが担保のメリットで、債権の回収を確実にするための一種の保険・保証といえます。

遅延損害金

遅延損害金とは、支払いが遅れたために生じた損害金です。相手方の支払いが遅れた場合、この遅延損害金も請求することができます。
遅延損害金について何の合意もしていなかった場合は、法定利率である年利5%が遅延損害金になります(民法419条1項、404条)。商取引の場合は年利6%です(商法514条)。
遅延損害金を高めに設定することで、相手の履行を心理的に強制することができますが、利息制限法4、7条や消費者契約法9条2号で利率の制限があるので注意が必要です。

抵当権(者)

抵当権とは、相手方の不動産に対して設定する担保権です。相手方にその不動産を利用させつつ、代金が支払われなかったらその不動産を競売や任意売却をして債権を回収します。
登記が必要など一定の手続とコストがかかりますが、価値の高い不動産から優先的に回収できるというメリットがあるため、非常によく利用される担保といえます。

手形(約束手形)

手形とは、手形の発行者(振出人といいます)が、手形の所持人に対して、記載されている満期日に、記載された金額を支払うことを約束した証券です。
手形の振出人が、その手形に記載された金額を支払えないと(「手形不渡り」といいます)、銀行取引停止処分など大きな信用上の損失を被ることになります。そのため、他の債権者よりも手形債権者に優先的に支払うという動機が生まれます。
このため、手形債権者は通常の債権者よりも、債権回収の可能性が高まるといえます。

登記(登記簿)

登記とは、公的な帳簿や台帳に記載することにより、公示するべき情報を登録することです。例えば、ある土地が誰の所有であるかは、目に見えません。このままでは、自分の土地であることを証明したり、土地の取引をしたりすることが困難になります。そこで、不動産登記簿という法務局が管理している公の帳簿に登録(登記)することによって、権利関係を公示する仕組みがあるのです。
代表的なものとして、土地や建物の情報を公示している「不動産登記簿」、会社の基本的な情報を公示している「商業登記簿」などがあります。

倒産

倒産とは、明確な定義はないのですが、一般的に「経済的に破綻した状態」として用いられます。相手方が倒産すると、債権の回収は非常に困難となります。担保権を取得しておくなど、事前の対策が必要となります。

動産執行

動産執行とは、相手方の動産を差し押さえて、売却してその代金から債権を回収する強制執行です。相手方が機械設備、在庫品、宝飾品などを有している場合に有効となります。

督促手続

督促手続とは、相手方に支払いの督促をして、相手方から異議がなければ確定判決と同一の効力を得ることができる、特別な民事手続です。
相手方が全く争わないことが予想される場合には、低コストで迅速に勝訴判決と同一の効果が得られるので、有効な手段といえます。

ナ行

内容証明郵便

内容証明郵便とは、送付した郵便物の書面の内容について、日本郵便が証明してくれる制度です。これにより、どんな書面を相手方に送付したかを証明することができるので、請求書、催告書など重要な送付物は、内容証明郵便で送る必要があります。
また、時効や支払日の関係から、いつ請求したかが重要になる場合がほとんどです。そのため、内容だけでなく、いつ配達しかも証明してくれる、「配達証明付きの内容証明郵便」で送ることが一般的です。単に内容証明郵便と呼ぶ場合でも、配達証明も含んでいると考えてよいでしょう。

根抵当権

根抵当権とは、継続的な取引を行う場合に、限度額(極度額といいます)を定めて設定する抵当権です(民法398条の2)。
通常の抵当権では、一つの債権について一つの抵当権が設定されるので、その債権が消滅すると、抵当権も消滅します。しかし、何度も融資、取引をする関係では、その度に抵当権を設定することとなり、手続負担となります。
そこで、合意した限度額(極度額)までは、何度融資や取引の発生が繰り返しても、その抵当権が存続することとしたのが、根抵当権です。

根保証

根保証とは、継続的な取引を行う場合に、限度額(極度額といいます)を定めて設定する保証です。
通常の保証では、一つの債権について保証が設定されるので、その債権が消滅すると、保証義務も消滅します。しかし、何度も融資、取引をする関係では、その度に保証契約をすることとなり、手続負担となります。
そこで、合意した限度額(極度額)までは、何度融資や取引の発生が繰り返しても、保証債務が存続することとしたのが、根保証です。

納品書

納品書とは、相手方に商品を納めたことを証する文書です。商品を引き渡すという義務を果たしたことを証明するために重要です。ただ、このままではこちらが一方的に納品したと主張しているだけなので、控えに相手方の署名・押印をもらうか、別途受領書をもらっていた方が安心です。

ハ行

破産(法)

破産とは、債務者が破綻したときに、その財産をすべて清算し、換価代金を債権者へ平等に分配することを目的とした手続です。この破産手続を定めた法律が破産法です。
平等に分配するといっても、相手方(破産者)は経済的に破綻しているために破産しているのですから、分配額は非常に低額になります。相手方が破産すると債権回収は極めて困難になりますので、担保権を取得しておくなど事前の対策が必要となります。

付加金

付加金とは、労働者に対して時間外・休日・深夜労働の割増賃金などを支払わなかった場合に、その未払金と同一金額の支払を、裁判所が使用者に命ずるものです(労働基準法114条)。一種の制裁的な規定です。
例えば、残業代が100万円あったとすると、この100万円に加えて、同一金額である100万円が付加金として加わります(合計200万円)。
付加金を命ずるかどうかはあくまで裁判所の裁量ですが、不払いが常態化しているなど悪質の場合には、命令が下される傾向にあります。
労働者側にとっては交渉や裁判を有利に進めるうえでの有力な武器になりますが、付加金の支払命令には労働者の請求が必要なこと(同法114条)、給料債権と同様に、付加金も請求できる期間が2年と非常に短い点(同条但書)に注意が必要です。

物上保証(人)

物上保証とは、金銭の支払い義務を実際に負っている人(主債務者といいます)以外の第三者(物上保証人)が、自分の財産を主債務者のため担保に供することです。会社が銀行から融資を受けるために、会社の代表取締役が自分の土地を担保に供する場合などが典型例です。
物上保証人からみれば、保証人と異なり、その財産を失う可能性だけにリスクが限定されます。債権者からすれば、保証人が経済的に破綻しても、担保にした財産から優先的に債権を回収することができます。

不動産執行

不動産執行とは、相手方の有する不動産を差し押さえて、売却代金から債権を回収する強制執行です。
不動産は一般的に価値の高い財産なので、相当金額の回収が期待できます。ただ、他の債権者も相手方の不動産には高い関心を持っています。不動産登記簿で抵当権が設定されていないかチェックするなど、注意が必要です。

不良債権

不良債権とは、回収が困難となった債権です。不良債権を多数抱えると、現金が入ってこないわけですから、倒産リスクが高まります。不良債権をいかに減らすかが、債権回収・与信管理の主たる目的です。

保証(人)

保証とは、金銭の支払い義務を実際に負っている人(主債務者といいます)以外の第三者(保証人)が、支払ができない主債務者の代わりに債権者に支払う旨の契約をいいます(民法446条1項)。
会社が融資を受けるために代表取締役が保証人になったり、子供が建物を賃貸するときに親が保証人になったりするケースがあります。
保証があると、回収することができる相手が増えることになります。また、保証人に迷惑をかけてはならないという心理によって、主債務者の任意の支払が期待できます。このように、保証は債権回収のための有効な手段となります。
ただ、保証人にとって酷な事態になるケースも多く、保証契約は必ず書面でしなければならないなど(同法446条2項)、保証人に対して政策的な保護が与えられています。

マ行

民事再生(法)

民事再生とは、経済的に破綻した(破綻するおそれのある)企業や個人が、支払義務の減額や免除を受けつつ、継続的に支払うことによって再建を目指していく手続です。この民事再生手続を定めた法律が民事再生法です。
民事再生は、破産する場合よりも債権者に対して支払額が多くなる場合にだけ認められます(清算価値保障原則といいます)。ただ、相当な割合の債権を減免(8割程度)されることになるので、破産と同様に金銭の全額回収は困難となります。担保権を取得しておくなど、事前の対策が必要となります。

民事調停(法)

民事調停とは、裁判手続ではありますが、訴訟と異なり、話し合いを中心として解決を図る手続です。この手続を定めた法律が民事調停法です。
調停では,裁判官のほかに一般市民から選ばれた調停委員二人以上が加わって組織した調停委員会が当事者の言い分を聴き,歩み寄りを促し,当事者の合意によって実情に即した解決を図ります。
訴訟よりも簡易な手続で、円満で柔軟な解決を目指すことができるというメリットがあります。他方で、話し合いがまとまらなかったり、そもそも相手方が調停に出頭しなかった場合には空振りに終わってしまうというデメリットがあります。
お互いに話し合いをする気持ちはあるが、中立的な立場の意見も聞きたいという場合には有効な手段といえます。

民事訴訟(法)

民事訴訟とは、訴訟の提起、進行、終了の一連の手続をいいます。この手続を定めた法律が民事訴訟法です。
民事訴訟は、相手方が同意していなくても提起することができますし、相手方が法廷に出頭しなければこちらの請求が認容されます(民事訴訟法244条)。つまり、強制的に回収することができる点に最大のメリットがある債権回収の手段です。

民事執行

民事執行とは、勝訴判決や担保権に基づいて相手方の財産を差し押さえて、売却する強制執行手続のことです。この手続を定めた法律が民事執行法です。
勝訴判決や担保権を有しているのに相手方が任意に支払わない場合には、この民事執行手続を執ることによって、強制的に債権を回収することができます。

民事保全

民事保全とは、訴訟を提起している間に、相手方が価値のある財産を隠匿、処分するリスクを回避するために、相手の財産を仮に差し押さえておく手続です。この手続を定めた法律が民事保全法です。民事保全により、訴訟判決の実行性を確保することができます。
例えば、代金の支払請求訴訟を提起して、勝訴判決に基づいて相手方の不動産に強制執行をしようとしても、訴訟の間にその不動産を相手方が売却すると、強制執行が非常に困難となります。これに対して、民事保全手続によってこの不動産を仮に差し押さえておくと、こうした事態を防ぐことができます。

ヤ行

与信管理

与信管理とは、金銭債権を確実に回収できるように、取引額の増減や入金状況、取引先の経済状態の変化に注意し、場合によっては取引を中止したりするなど、相手との取引に関して適切な処置・対策をすることです。
相手方の倒産などが生じてから回収に着手しても、あまり期待できません。平時から、相手方の経営状況を把握し、適切な契約・担保を取り、有事の際には確実に回収する。こうした与信管理が、予防法務の観点から非常に大切です。
与信管理は、債権回収の成功率を高め、キャッシュ・フローを改善する効果あります。

ラ行

留置権

留置権とは、相手方の財産を管理している場合に、相手方が金銭を支払うまで、その財産を自らのもとに留め置くことができる担保権です。
時計の修理代金を支払うまで、時計を引き渡さないといったケースが典型例です。留置権を行使することにより、相手方は金銭を支払わなければ財産を引き取ることができないという心理的強制が働くので、任意の支払いが期待できるようになります。
留置権は民法上の留置権(民法295条)と、プロ同士の取引である商取引によって生じた商事留置権(商法521条)とがあり、それぞれやや異なる性質があるので注意が必要です。

連鎖倒産

連鎖倒産とは、ある企業が倒産した場合に、その企業と密接な関係のある企業が連続して倒産してしまう現象です。
ある企業が倒産すると、その企業に融資していたり、商品を販売していたり、その企業から主要な商品を仕入れていた企業も損失を被り、倒産してしまうケースがあります。これが連鎖倒産です。当然ながら、その企業で勤務していた方たちも大きな打撃を受けます。
こうした事態を防ぐためには、早期に取引先を支援したり、取引先を分散するといった対策が必要になります。

連帯保証(人)

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担することをいいます(民法454条、458条)。通常の保証とは異なり、債権者はまず債務者から回収することが必要でなく、最初から連帯保証人に対して請求することができます。
債権者に有利ため、実際の保証契約は、ほとんど連帯保証契約で行われています。

ワ行

和解

和解とは、お互いが譲り合い、歩み合った上で紛争を解決する旨の合意です(民法695条)。示談も同じ意味で使われます。
和解による解決なら、お互いが納得の上で合意されているので、任意の支払が期待できます。また、譲り合った上での合意なので、お互いの関係が維持・回復することが望めます。訴訟になっても結局は和解で解決する場合が多いのは、こうした利点があるからといえます。
ただ、こちらも譲る必要があるので、一定程度請求金額の減額が必要になる場合があります。
また、万が一相手が和解の内容通りに支払わなかった場合、これを強制するには原則として訴訟が必要になります。これを防ぎ、訴訟を回避する方法としては、①和解時に一括で支払ってもらう、②裁判手続の中で和解して確定勝訴判決と同じ効果のある和解調書を作成する、③和解内容を公正証書にするといった方法があります。